生き延びるために選んでいた形
安心がなかった日常で、わたしは何を守っていたのか
あの頃のわたしは、
安心して生きていたわけではありませんでした。
時間に追われて、
つねに二つ、三つ先のことを考えていました。
このあとにすること。
まだ残っている用事。
明日を万全に迎えるために、今できること。
同じ失敗をしないために、過去を何度も思い返すこと。
頭の中はいつも、
「しなければいけないこと」でいっぱいでした。
怒られないために。
悪態をつけられないために。
嫌味を言われないために。
【わたしは、休まる場所のないまま】
先の先まで気を張り続けていました。
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■ 壊れたら、失ってしまう気がしていたもの
壊れたら、
立派な母親じゃなくなる。
夫が求める理想の妻じゃなくなる。
時間も守れない。
言われたこともできない。
身なりも整えられない。
仕事も、きっとできなくなる。
「いい加減で、信頼できない人」
【そう扱われてしまう】のが、怖かった。
本当は、
ご飯も作って、
家を整えて、
子どもの明日の準備もできて、
いつも笑顔で、元気で、明るいお母さんでいたかった。
でも、崩れてしまうのが、何より怖かった。
壊れたら、
今以上の否定や、拒否や、悪態が向けられる。
それに耐えられる自信が、
【もう残っていなかった】のだと思います。
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■ 守っていたのは「ちゃんとしている自分」
だから、
眠れなくても。
身体が重くても。
心が追いつかなくても。
「まだできる」
「わたしなら大丈夫」
そう言い聞かせて、
自分を立て直そうとしていました。
それは、
強さではなかったと思います。
生き延びるために、
役割を握りしめるしかなかった。
母親として。
妻として。
仕事ができる人として。
稼げる人として。
そうでなければ、
【ここに存在してはいけない】
そんな気がしていました。
だからわたしは、
「壊れない自分」を
必死に演じていたのだと思います。
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■ それでも、安心できた瞬間があった
そんな生活の中で、
ごく短い瞬間でしたが、
身体が先に反応したことがありました。
何も考えていないのに、
胸のあたりがふわっとあたたかくなって、
「大丈夫だ…」
と、
思考より先に感じた瞬間でした。
理由はありませんでした。
未来の保証も、何もなかった。
でも、
【自分に向かって】
そう言っていい気がした。
恐れも、不安も、焦りもなく。
ただ、ここに“在る”という感覚。
何者でもなくていい。
役割を果たしていなくてもいい。
その瞬間だけ、
何も背負っていない
無色透明な「わたし」に
【戻れていた】のだと思います。
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■ 安心がなかった世界で、わたしが守っていたもの
あとから、
ゆっくり分かってきたことがあります。
わたしが必死に守っていたのは、
「理想の母」や「求められる妻」
【そのものではありませんでした。】
安心を失わないための、
生き延び方そのもの
だったのだと思います。
安心がなかったから、
壊れてはいけなかった。
でも、
あの一瞬の安心を知ってしまった今なら、
【少しだけ、距離を取って】言えます。
本当に必要だったのは、
証明でも、評価でも、役割でもなかった。
ただ、
「何もできなくても、ここにいていい」
その感覚でした。
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今日は静かに、ここまでにします。
もしあなたにも、
壊れないように頑張り続けてきた時間があったなら。
それは、弱さではなく、
【生き延びるために、そうするしかなかった】
選択だったのかもしれません。
